荒木貴之 著
「ロボットが教室にやってくる 知的好奇心はこうして伸ばせ」

ロボットが教室にやってくる 知的好奇心はこうして伸ばせスコ−レ・アソカがおこなっている授業メソッドと同じ内容が
立命館小学校でも授業の中に取り入れられていることが、
こちらの本で紹介されています。
そのすばらしい内容を、一部抜粋でご紹介いたします。

はじめに

立命館小学校は2006年に開校した新しい学校です。
学ぶことの楽しさ、わかることの喜びを存分に味わうことができる学校を目指して、
先例のあるなしにとらわれず、新しい授業に果敢に取り組むことが本校の特色です。
環境問題や少子高齢化など、これからはますます社会は複雑化していきます。
未来を切り開いていく力を子どもに育てなければなりません。
苦労もあるだろうけれども、良策を考え出し、実現させ、発展させる。
みんなが幸せに生きていける社会を模索し続ける。そういう人間を育てたいのです。
そのための教育方法を紡ぐのが私たちの仕事です。
(本文、2行目から8行目まで抜粋)

ものづくりは子どもたちを熱中させる

立命館小学校のロボティクス科では、「力・構造(原理)」「電気・回路」「プログラミング・制御」 「デザイン」「社会倫理」の5つの領域からアプローチすることとし、それぞれについて学習指導要領(平成10年告示の現行要領)と関連づけた5つの領域の力を伸ばすことを目標にしています。
低学年では「レゴ・ミニセット」による「てこ」「歯車」「滑車」「車輪」の学習に取り組みます。
この授業は、児童教育の分野で世界的に 高名なシーモア・パパート米国マサチューセッツ工科大学教授が提唱する コンストラクショニズム(構築主義)の考え方に基づいて開発されたもので、 ブロックを組み立てることを通して力や構造の概念を体感することをねらいとしています。
子どもたちは、まず設計図通りに基本形の作品を組み立て、 サイエンスの基礎・基本となる力・構造の概念学びます。 その後、歯車をひとつ追加すると力の向きを変えられることや、 大小の歯車を組み合わせるとギア比により小さな力で大きな力を生み出すことができることなどを 知っていきます。
さらに、 造形面での試行錯誤を通じて美的なデザインや機能的なデザインについても学んでいきます。
子どもたちは、自分が納得するまでブロックを手放しません。 それほど子どもたちを熱中させる理由は、ブロックの美しさや組み立てやすさに加えて、 ブロックの美しさや組み立てやすさに加えて、ブロックの組み合わせに自由度があること、 自分がつくったものが実際に動くことにあります。
だからこそ、アイデアさえあれば歯車を組み合わせるだけで予想外に複雑な作品を 自力でつくり上げることができるのです。 自らの意図を持って製作に取り組み、それが実際に目に見えるものとして完成し(見える化)、 しかも動き出すのですから、作品への愛着は格別でしょう。
ものづくりの喜びを体で知ることで、よりいっそう「ロボットの時間」が楽しみになります。
(本文65ページ、1行目から最後まで抜粋)

ブロック遊びは脳の高度な働きを刺激する

ブロックを自分の手指で扱うことは、子どもたちの脳にどのような影響を与えるのでしょうか。
幼少期のブロック遊びが言語習得に影響を及ぼすという研究成果があります。
ワシントン大学の研究チームが、1歳半から2歳半の子どもを対象に、 半数にプラスチック製のブロックを与え、残りの半数にブロックを与えずに、 6ヵ月後に言語の習得度の差を比較しました。
その結果、ブロックを与えられた実験群の子どもたちは、 ブロックを与えられなかった子どもたちよりも、言語の習得度が15%ほど高かったのです。
この研究では、子どもの脳が急速に発達する際にブロックで自由に遊ぶことで、 思考や記憶などが刺激されると指摘しています。
言語習得や思考・判断といった高次の機能は大脳の働きによるものです。
(本文68ページ、1行目から10行目まで抜粋)

存分に試行錯誤させることの大切さ

手指を使ってロボットや陶器を製作し、辞書引きやそろばんに熱中する子どもたちは、 学習意欲にあふれ脳がフル回転しているように見えます。
その様子は、あたかも、パパ−ト教授が提唱するコンストラクショニズム(構築主義)に 基づいて考案された「ハンズ・オン・ラーニング」(手指を使って体験的に行う学習活動)の 真髄を見るようです。 巻頭「なぜ、ロボットなのか」で見たように国際的な学力比較におけるわが国の相対的位置の 低下や学習に対する意欲の低下は、立命館小学校のロボティクス科のように、 納得のいくまで何度も何度も作り直すようなハンズ・オン・ラーニングに費やす時間が 減少したことも一因ではないかと考えられます。
失敗や試行錯誤から学ぶことはたくさんあります。 試行錯誤や紆余曲折を自ら体験することによって「ひらめき」が生まれ、 それが「わかった!」「なるほど!」という感動(アハ体験)をもたらして脳が一気に 活性化することもあります。
反対に、何かを成し遂げるまで失敗もなく試行錯誤もないなら、 創造性や感動は生まれにくいでしょう。
授業時間、授業内容を精選し、時間的・内容的に「ゆとり」を持たせたわが国の教育が、 脳を活性化するのに必要な経験や体験を奪い、結果的に、創造性や意欲・情動などを 育めなくなったのかもしれません。
関連して、いま、国レベルでも「ものづくり」の再評価が高まりつつあります。
わが国の教育の方向性を先鞭づける文部科学省の中央教育審議会では、 その中の初等中等教育分科会教育課程部会において、ものづくりの経験が減少していることに 注視し、ものづくりの重要性を訴えています。
(本文74ページ、1行目から75ページ最後まで抜粋)

「成すことによって学ぶ」ことが未来への豊かな可能性を開く

昔から言われ続けていることが真理であることは多々あるものです。
19世紀から20世紀前半にかけて活躍した米国の教育哲学者ジョン・デューイは、 体験を重視する教育を「成すことによって学ぶ」(ラーニング・バイ・ドゥーイング)という 言葉で表現しました。
これは、私たちが進めている「手指を使ったものづくり学習活動」そのものです。
(本文76ページ、1行目から5行目まで抜粋)

世界の子どもたちがロボットで競い合う大会を運営

1998年以来、毎年開催されている「ファースト・レゴ・リーグ(FIRST LEGO League)」 (略称はFLL)という世界最大規模の国際的なロボット競技会があります。
マインドストームの発売に合わせて、レゴ社が米国のNPO法人ファーストと共同で開催を 始めたもので、10〜15歳(米国、カナダ以外は9〜16歳)の子どもたちが 自作ロボットで競い合います。
大会ごとに設定されるテーマは科学技術トレンドが反映されたもので、 たとえば、2006年は「ナノ・クエスト(Nano Quest)」(ナノテクノロジーの世界)、 2007年は「パワーパズル(Power Puzzle)」(エネルギー問題)でした。
レゴブロックでつくったロボットの性能を競うばかりではなく、 テーマに関する研究成果とその発表内容(プレゼンテーション)も評価対象であること、 チーム単位(3〜10名)の参加であることなどにより、競技会に向けた取り組みを通じて、 問題解決能力、創造力、論理的な思考力、チームワークやコミュニケーション力の育成という 教育的意義のあるイベントとして高く評価されています。
参加者も年々増え、2007年は38カ国、10万8000人以上にのぼりました。
(本文144ページ、1行目から最後まで抜粋)
当教室からも参加しています。歴代の成績、詳しくはこちらをご覧ください